抱き合ったあの日

少年は、幼い日々のことを思い出していた。

両親のことが、大好きだった。

仕事ばかりしているけど、休みの日には、本を読み聞かせてくれた父。仕事に向かう父の背中はかっこよくて、憧れていた。

温かい太陽のように包み込んでくれた母。優しくなでてくれるその手は柔らかくて、褒めてくれるのがいつも楽しみだった。

そんな両親を失ってから幾年経ったが、少年は今も、両親を想い続けている。目を瞑ると、両親と幸せに暮らしていたあの日々が蘇ってくる。手が届かなくても、抱かれた腕の温もりは、今も感じることができる。

寂しいけれど、会いたくて仕方がないのだけれど、少年は、心の中で微笑んでいる両親が悲しまないように、今日も前を向くのだった。


……そんな少年の、幼き日々のひとかけらを切り取った、一枚の写真のようなイメージで描きました。