病院の白とグレーの間のような壁、長く待たされる待合室でも『無機質な壁紙に痛みが増す思いがした』という経験を持つ方も少なくないのではないでしょうか?
もともと色には色自身が持つ力があります。もしそれを使って、痛みに苦しむ患者さんに少しでも有益な空間を創ることができたら…。
そんな思いを抱きつつ、今回の壁紙提案では色と病気との関係、色の可能性についてお伝えします。
色による病の治療といえば、西洋ではエジプトが発祥の地と言われています。
ただし、エジプトでは色そのものを治療に使うのではなく、治療すべき病状の色に対する投薬に色が使われました。
出血には赤い薬、打撲には紫の薬、といった具合です。
ヒポクラテスも様々な色の軟膏を傷の手当に使っていました。
さらにアリストテレスからローマの伝説的な医師A.C.ケルススまで、色を広範囲の治療に用いていたと言われています。
しかし、この時代の色の利用はその後のキリスト教の到来と共に「邪教」として遠ざけられ、色による治療が再び日の目を見るのはルネサンス期以降となります。
ルネサンス時代の医師、パラケルスス(1453~1541)は心と体の治療に色を使い、同時代で最も腕のいい医者と評価されました。
ニュートンによる光のスペクトル分解により、虹が7色であることが証明され、光と色の関係が明らかになってから、20世紀に入ると色を使った治療に科学的探究がされるようになりました。
医学博士のディンシャー・P・カディアリにより、今日ではクロモセラピーと呼ばれるカラーライトでの治療が始められました。
1903年、デンマークの医師N・フィンセンが、光と色を活用した治療法を考案し、ノーベル賞を授与されました。
その後米国のF・ビランがカラーセラピーの礎を築きました。
現代では心理分野に活用されることが多い色彩ですが、医療現場では赤外線や紫外線が広範囲な治療に使用されるなど、色彩理論と色による治療の分野は進歩し続けています。
現代のほとんどの病院が西洋医学が中心であることに対して、最近は代替医療、東洋医学として漢方やヒーリングなども注目されつつあります。
西洋医学のような病気の部分にのみ直接作用して短時間に治癒するといった、わかりやすい効果よりも、全体的にゆっくりと原因に向き合いながら治してゆくというやり方に共感を覚える人も増えています。
ヨガやヒーリングなどで取り上げられるチャクラという考え方もそういった東洋思想の一つです。
色と密接な関係のあるチャクラも色と健康を考える上で外すことのできない要素ではないでしょうか?
チャクラ(サンスクリット語/古代インド語)とは体の中と周囲にあるエネルギーセンターで、その人の思いから影響を受けています。
チャクラにはそれぞれ関連する鮮やかな色があると言われ、その色を放射したり吸収したりしています。
チャクラには主要なものが9つあります。
また、この主要チャクラはホルモン腺のそばにあり、チャクラそのものがエネルギーを体に送り込むと共に、それ自体がエネルギーを吸収・放射しています。
私たちの肉体が感情的・肉体的・霊的にバランスのとれた状態(健康)を保つために、これらのチャクラがスムーズに回転することが大切と言われています。
クロモセラピー(色光療法)では、色の光を必要な部分に照射するという方法をとっていますが、壁紙に色を使うことで1日の光の中で自然に色からの恩恵を受けることができると言えます。
普通の家庭の場合、調子がいい時も悪い時も同じように色の影響を受けることは、良いことばかりとは言えませんが、病院、しかも特定の診察科の場合、主にその部位に支障があるために診察室や待合室に集まることが一般的です。
そのような患者様のために、状態の改善につながる待合室の色彩設計をするというの病院の経営にとってプラスの効果をもたらすことが期待されます。
まずは、色それぞれが体のどの部位にどのような影響力を持つのかを知り、色彩設計に活かすことも有効かと思います。
赤は血中にアドレナリンが分泌されるのを促します。生殖器、血液、脚、筋肉、副腎に関係すると言われています。
ただし赤の持つ色の力が強いので、上半身には使用しません。
また使用にはクロモセラピーの専門家や医師の指示が必要です。
オレンジには吸収の役割があるため、腹部、腎臓、腰部、腸の下部に結びついていると考えられています。赤と同様副腎と関係があります。
黄色に関しては、東洋・西洋を問わず、胃との関係があります。また膵臓、太陽神経叢、肝臓、胆嚢、脾臓、消化器系、皮膚や神経系にも関係があります。
これは光を浴びるだけでなく、黄色の服を着たり、身の回りに黄色を多用するだけでも効果が期待できます。
緑は重要なヒーリングカラーの一つです。
緑が関係する体の臓器は心臓、胸腺の働き肺の下部、胸部、肩とも関連づけられます。
緑という色自体に強い解毒作用があるといわれています。
青は咽喉周辺の部位と結びつけて考えられることが多い色です。
咽喉、甲状腺、副甲状腺、肺の上部、上腕、頭蓋底などが青と関連づけられ、青いもので包んだり、青い光を当てると何らかの影響を受ける場所です。
藍は、背骨と結びつけて考えられています。
内分泌系では下垂体です。
つまりこの色はホルモンの分泌にも関わると言えます。
下位脳、目、副鼻腔とも関連しています。
紫は、頭頂部、脳、頭皮、松果体を象徴しています。
心筋を含む全ての筋肉の緊張をほぐすと言われます。
また体内の炎症や免疫システムの障害、神経のイラつき、激しい頭痛の治療にも役立つと言われています。
腎臓の過剰な働きを抑えるのに適した色です。
ただ、紫は控えめに使わないと憂鬱になったりする上、元からうつ状態の方には自殺傾向が現れることがあります。
予防として金色やオレンジのライト(電球色)やインテリアなどを一緒に使うことが必要です。
紫は子供には向かない色ですが、使うのであればごく短時間にすることです。
紫の光は後頭部のみに使用してください。
この章では、一般的な診療科で使うと効果が出そうな壁紙をいくつか取り上げてみます。
ここに取り上げた診療科は、一般の人が主に受診する診療科であると共に、待たされることが多い科を選んでみました。
先に述べた各色と症状の関係から類推したもので、あくまで一例です。
内臓の疾患を扱う臨床医学の一部門。外科的手法を用いず、主として薬物によって保存的に治療を行う。
診療内容は大別すれば問診・視診・触診・打診・聴診・臨床検査ならびに治療である。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
感染症をはじめ、循環器疾患、神経系疾患、消化器系疾患、血液疾患、呼吸器疾患、内分泌疾患、腎(じん)泌尿器疾患、アレルギー疾患、新陳代謝疾患などのほか、膠原(こうげん)病や中毒など非常に広い範囲に及んでいる。(日本大百科全書)
このように極めて広範囲に及ぶ内科では、患者が不安を抱えて待つ待合室には痛みを緩和する色の組み合わせ、診察室では顔色に影響のない色が必要とされると考えられます。
1900年代に入って内科のなかの一専門分科として分化したもので、大学の講座、病院の診療科目、医師の専門領域の一つとして認められるようになった。
日本でも35年から循環器学会が組織され、60年から九州大学をはじめとして講座が設置されるようになった。
心臓・脈管系のあらゆる疾患を診療の対象としており、対象疾患に高血圧や動脈硬化など、成人病として最も頻度の高い疾患が多く、かつ慢性疾患が多いので、患者の数も多い診療科の一つである。(世界大百科事典 第2版)
高血圧、動脈硬化、心臓疾患、リンパ管関連、ガンなどこのように循環器系の病気としては成人病や心疾患など、どちらかというと成人患者中心と考えられる。
15歳以上は内科の患者と考えると、こちらにも児童が受診するとは考えられません。
患者が不安を抱えて待つ待合室には痛みを緩和したり、不安を改善する色の組み合わせ。診察室では、鎮静の効果を持ちつつ循環器系に有効な色を中心に選ぶのが良いかと思われます。
整形外科は運動器の疾患を扱う診療科です。
身体の芯になる骨・関節などの骨格系とそれを取り囲む筋肉やそれらを支配する神経系からなる「運動器」の機能的改善を重要視して治療する外科で、背骨と骨盤というからだの土台骨と、四肢を主な治療対象にしています。
背骨と脊髄を扱う「脊椎外科」、上肢を扱う「手の外科」と「肩関節外科」、下肢の「股関節外科」、「膝関節外科」と「足の外科」、スポーツによるけがや障害を扱う「スポーツ医学」、「リウマチ外科」、腫瘍(できもの)を扱う「骨・軟部腫瘍外科」、骨粗鬆症などを扱う「骨代謝外来」と多数の専門分野があります。(公益社団法人日本整形外科学会HPより抜粋)
スポーツ傷害や交通外傷、労働災害などに代表される打撲、捻挫、骨折などの外傷学は勿論のこと、変形性変化を伴う加齢疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、痛風、運動器の腫瘍、運動器の先天異常など先天性疾患など、新生児時から老年まで幅広い患者層を扱います。(公益社団法人日本整形外科学会HPより抜粋)
顔面から頸部までの臓器である耳、鼻腔、副鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、甲状腺等を主に診療研究する医学の一分野。(Wikipediaより抜粋)
外耳炎・中耳炎・メニエール病・前庭神経炎・アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・鼻出血(鼻血)・上顎洞癌・扁桃炎・扁桃肥大・喉頭癌など。