ナラ・カシなどブナ科コナラ属の総称。
英国の代表的な木で、日本のミズナラやカシワに近いがはるかに大木。
木材としては堅く、家具・船などに用いられる。
英語圏では雷神と結びついている。
逆境に耐える十字架の木であったり、男性的な力と聖木として崇められていることが多い。
ローマ神話では最高神のジュピターとその妻ジュノーがナラの木に結びつけられており、その葉は勝利の冠に使われる。
西洋世界では非常に身近でありながらその堅牢さや巨大さで敬われている木の一つである。
トネリコ属に分類される木は45種類。
Ashと呼ぶ場合、一般には西洋トネリコを指す。
スカンジナビアの聖なる宇宙樹(Yggdrasil ユグドラシル)はトネリコであると言われている。
また北欧神話では最初の人間は流れ着いたトネリコの流木から作られたとされている。
ギリシャ神話ではトネリコはウラノス(天空神)の去勢された男根の血から芽を 出したと言われる。
古代では邪眼、不和、蛇の毒牙からの魔除けであった。
この「毒牙からの魔除け」というご利益からの連想で吸血鬼を殺すのに使われる木製の杭がトネリコになったのではないかと思われる。
材質は強く、木目はまっすぐで、ギリシャの英雄アキレウス(アキレス腱で有名)の槍の木材として使われたと言われている。
上記の逸話からもわかるように、曲げやすく衝撃に強い性質から、槍や弓、ハンマーなどの持ち手に多く用いられた。
また、生木でもよく燃えるので、燃料源にも使用された。
建物の柱、木工品などに多く使われ、初期の飛行機のフレームにも使われた。
ギリシャ神話の芸術と詩才、音楽、予言の神である太陽神アポロンが恋の矢を操るクピド(キューピッド)をからかったことから仕返しされ、アポロンがどんなに恋しても逃げ回ったダフネという妖精が、逃げて逃げて最後に月桂樹になったという逸話を持つ。
恋い慕う気持ちを受け入れてもらえなかったアポロンが、せめて自分のものになってほしいと、自分の持ち物や冠に月桂樹を用いたといわれる。
古代オリンピックがアポロンの祭典とともに開催されるようになってから、競技の勝者に対してアポロンの聖樹である月桂樹で作られた冠が与えられるようになった。
詩才や音楽に秀でた人物に与えられる冠はその守護神であるアポロンの木:月桂樹で作られる。(優れた才能として王家や政府から認められた称号を持つ詩人=桂冠詩人として、月桂樹をかぶった姿で表される。役職として俸給が支給された)
またフィレンツェの最盛期を現出し、ボッティチェリやレオナルド・ダ・ビンチなどのパトロンでもあったロレンツォ・デ・メディチ(イル・マニフィコ:豪華王の名を持つ)の紋章にも使用された。
北欧古代文字はブナの板に書かれたので、beechはbookを連想させるとも言われる。
ただ、生育が遅く、腐りやすく曲がりやすいために、20世紀の後半までは用材としては好まれなかったとのこと。
平安時代後期からは、ケヤキの代わりに漆器の椀や皿などの材料として欠かせないものとなり、現在はキノコ栽培の原木としても使用されている。
ブナは成長するにつれて毒素を出し、一定の範囲に一番元気なブナのみが残るようになることから、自分で強者生存の理を実現している木でもある。
まれに一定の範囲に双子のような2本のブナが残っている場合もあるが、それは一つの実の中に2つある同遺伝子を持った種から成長したものである。
Oak(樫)が「森の王」と呼ばれるのに対して、Beech(ヨーロッパブナ)は「森の女王」と呼ばれる。
ケルトの伝承では蛇(知恵と復活の生き物)と関連している。
さらに保護的な力を持ち、害悪に対する保護のための魔法にも使用される。
オレンジはギリシャ神話の最高神ゼウスの妻ヘラ(ローマ神話ではジュピターの妻ジュノー)に捧げられた木。
結婚、家庭、出産の守護神でもあるヘラの木でもあることから、結婚式の花嫁のブーケに使われたりする。
多情な最高神ゼウスが、正妻として迎えたのはヘラだけである。
オレンジの花から取れるエッセンシャルオイルはネロリと呼ばれ、バラと並んで非常に高価な香油の一つである。
オレンジは花と果実、緑の葉を同時にならせることができるため、「寛容」と「豊穣」のシンボルともされる。
またオレンジの実は「黄金のリンゴ(実)」として豊かさの象徴でもある。
エッセンシャルオイルでも、花だけでなく、実や葉、枝からも精油が取れる貴重な木でもある。
クリスマスツリーとして広く知られているモミ。
ギリシア神話の牧場の神(牧神)パンに捧げられた神木である。
また北欧神話の最高神オーディンにも捧げられている。
ドイツでは魔除けとされている。
ただ、最も腐りやすい。
木材は色が白く、匂いも弱く、清潔感があるので食器類や卒塔婆、棺桶などに用いられる。
欧米では樹液や樹脂や精油ををつくって飲料や入浴剤として使われることもある。
モミ属は種類も多く、北半球の寒冷地から温帯にかけて、約40種が生息する。
和名の一位は、古代日本で高官の笏(天皇に拝謁するときに、自分の息がかからないように口の前に捧げ持った木の板)を造るのにこの木が使われたことに由来する。
庭木としては沖縄を除く日本全国で一般的に見られる。
木材としても年輪が細かく、白くなめらかで光沢があり反りや割れも少なく、優秀である。
様々な人種で弓の材料にも用いられた。
仏舎利を収めた塔の忌み詞(いみことば)を「あららぎ」ともいう。
桃の花は春の季語でもあり、中国から日本にもたらされた木である。
中国において、桃は仙北、仙花であり、神仙に力を与える樹木・叶える植物として親しまれている。
桃の実は長寿を示す吉祥図案であり、寺社にデザインとして多く桃が使われるのも、邪気払いの力を生かしたものである。
日本でもイザナギノミコトが、イザナミノミコトを黄泉の国から連れ帰る際にその変わり果てた姿に驚き逃げるが、怒ったイザナミノミコトが放った黄泉醜女(ヨモツシコメ)を三つの桃を投げつけることで追い返すことができたという逸話がある。
このように、邪気をはらい、百鬼を制する桃だからこそ桃太郎は鬼に勝てたのかもしれない。
釈迦は菩提樹の下で悟りを開いたと言われる。菩提とは釈迦、すなわちゴータマ・ブッダの別名であるボーディに由来する。
菩提樹はすなわち「ゴータマ・ブッダの木」という意味である。
仏教の三大聖樹(無憂樹・インド菩提樹・沙羅双樹)の一つ。
菩提樹自体はシナノキ科の植物の一種とされるが、釈迦が悟りを開いた木はクワ科のインド菩提樹とされる。
ヨーロッパでもシューベルトの歌曲集「冬の旅」で歌われた「菩提樹」はセイヨウシナノキと言われる。
また菩提樹はヒンドゥー教の主要3神が住む木と言われている。
根にはブラフマー神(世界の創造と次の破壊の後の再創造を担当)、幹にはシヴァ神(世界の寿命が尽きた時、世界を破壊して次の世界創造に備える)、枝にはヴィシュヌ神(世界の維持・繁栄を司る)が宿ると言われる。
ギリシア神話ではフィレモンとバウキスという老夫婦が旅人に実をやつした最高神ゼウスとヘルメスを精一杯もてなしたことから、老夫婦の願いを叶えようと申し出た際、ずっと一緒にいたいとの返事を聞いて、死によって離れ離れになることがないようにフィレモン(夫)を樫の木に、バウキス(妻)を菩提樹に変え、二本の木は寄り添って永久に仲良く暮らしたという。
日本では青々としてまっすぐ伸びる様子から、榊とともに清浄な植物の一つとされる。
中国の宗の時代に始まった文人画で好まれた画題で、歳寒三友(さいかんのさんゆう)と言われた松・竹・梅。松と竹は寒中にも色褪せず、梅は寒中に花開く。
これらが文人の理想とも言える『清廉潔白・節操』を表すとして愛された。
また蘭・竹・菊・梅を草木の中の君子として四君子(しくんし)として称え、図柄や模様などにも使われる。
春は蘭(ほのかな香りと気品)、夏は竹(寒い冬にも葉を落とさず青々としている上に、まっすぐな性質を持っている)、秋は菊(晩秋の寒さの中で鮮やかに咲く)、冬が梅(早春の雪の中で最初に花を咲かせる強靭さ)として好まれた。
現在でも着物の柄などに見られる。
ちなみに君子とは徳と学識、礼儀を備えた人物で文人の目指した人物像。
生活用品にも使われた実用性や幼木である筍が食用とされ、家紋などにも多く使われている、日本人には馴染みの深い木である。