かべいろ.comをまだ始める前、約10年前に初めて業務用大型インクジェットプリンターを導入した。
当初はまだ何もわからず、インクジェットプリンターといえば家庭用のものしか知らなかったし
こんなにでかいものがあるということすら知らなかった。
その当時のプリンターは溶剤タイプ、UVタイプ、水性タイプという感じでインクの種類(材質)によって
各々の特徴があった。ざっくり言うとUVは白の発色が濃いから窓ガラスサイン等には向くが、その代わりインクが乾燥すると硬くなるからラッピング等の3次曲面へはパリパリと割れて施工できない。水性は発色はもっとも綺麗だが耐候性に弱い。
溶剤タイプは発色があまり良くないが印刷媒体を選ばないマルチに対応できる性質。
というわけで垂れ幕から看板、車用ラッピングフィルムまで印刷しなければいけないサイン業界にとって溶剤タイプのプリンターはおのずと一番人気だった。
そして同時にインクカートリッジの値段にもそこそこビビった。1本の金額で、居酒屋で軽く大人3人は飲める。
こんな高いカートリッジを6本も挿さなければ動かないし、濃い印刷をしてるとみるみる減っていく。。。
これはまさにプリンターメーカーのビジネスモデルにまんまと乗っかってしまった自分たちが悪い。
おとなしく買い続けるしかないのだ。と言い聞かせた。
しかしながらその溶剤タイプ、いいことばかりではない。溶剤と聞いてピンとくる方も多いだろうが、
「インクが臭い」のだ。まさに溶剤臭。なかなか、というかかなり体に悪そうな感じw。
自分たちが導入した低溶剤タイプのものは、溶剤タイプのものから溶剤の割合を低くし臭気を抑えたタイプ。
会社を立ち上げたばかりの頃はプリンターとパソコンを同じ部屋に置き、そこでデザイン作業をしながら背中の後ろで印刷をしていた状態だったので、そこそこ臭かった(笑)。
今ではその低溶剤タイプのプリンターも時代が進み、かなり臭気が抑えられてきている。印刷品を近くで嗅いでも
乾燥してしまえば全く臭いがわからない。進化というものはすごいものだ。
導入当時、一番苦労したのが「印刷スジ(ムラ)」だった。
インクジェットプリンターはご存知の通り、ヘッドが左右に動きつつ印刷フィルムを前に送って出していくもの。
つまり右から左に1回進むたびに1cmに満たない幅の印刷をしていくのだが、まだまだその当時はその印刷時に
進むフィルムの距離と隙間なく印刷しなければいけないその印刷の幅が合わず、微妙に重なったり離れて白いスジが
でてしまったり、相当苦労した。
(こんなイメージ)
これは機械側にフィルムをどれほど前に送るかという送り調整用のプログラムがあり、しっかり合わせればその時は綺麗に印刷することはできたのだが、長尺物、つまりながーい看板等を印刷すると、最初は合ってたのにだんだんずれてきて後半はスジがバリバリ入ってたみたいなこともしょっちゅうあった。
ここら辺の調整感覚はずいぶん会得した。このくらい長いとずれるから半分ずつ印刷してまた調整しようとか、色々な対策を講じることができるようになった。
が、綺麗な壁紙を印刷するとなるとそんな危なっかしい、不安定な印刷では話にならないわけで。だから10年前だったらインクジェット壁紙のビジネスはかなり難しかっただろう。
今ではプリンターにフィルムや壁紙を設置すると、厚みを自動で読み取り、送り調整も自動で行うため昔のような印刷ムラはほぼ皆無に近くなった。
本当に、時代の進化ってすごいと思う。勤勉な日本人に感謝。